Samsungが開発中のAndroid XRヘッドセット「Project Moohan」を約30分間体験する機会を得ました。2025年の一般発売に先立つ開発者向けバージョンながら、製品版に近い完成度を感じさせる内容でした。
本体は主にプラスチック素材で構成され、Qualcomm Snapdragon XR2+ Gen 2を搭載。特筆すべきは、Apple Vision Proと比較して大幅に軽量化されている点です。Vision Proが過剰とも感じられる設計であるのに対し、Project Moohanは実用性を重視した印象です。
直感的な操作性を実現する新インターフェース
操作は右側面のトラックパッドを中心に行います。タップすることで、時刻表示やクイック設定、アプリランチャーなどのUIオーバーレイが表示されます。
特徴的なのは、親指と人差し指でつまむような「ピンチ」ジェスチャーによる操作です。手からは光線が伸び、ポインティングやピンチズームが可能です。さらに、アイトラッキング機能との組み合わせにより、視線だけで操作対象を選択できます。
Geminiがもたらす革新的なAI体験
最大の特徴は、Gemini 2.0を搭載した「Project Astra」との統合です。クイック設定から有効化すると、視界上部にインジケータが表示され、音声コマンドの待機状態となります。
例えば、動画視聴中に気になる情報があれば、その場でGeminiに質問可能。翻訳やGoogle Maps上の場所の説明、YouTube動画の内容解説などをリアルタイムで提供します。現実世界の対象物についても、サッカーユニフォームを着た人を見かけた際にそのチームの順位を確認するなど、自然な対話形式でのAI活用が可能です。
Googleの過去10年の技術革新が結実
Project Moohanには、Googleが長年培ってきた様々な技術が統合されています。
Google Photosの「シネマティック写真」機能は、ヘッドセット上で実寸大に近い3D表示となり、圧倒的な没入感を実現。Google Mapsの「イマーシブビュー」も、従来のスマートフォン画面では実感しづらかった魅力を存分に発揮します。
また、Android 12Lで導入された大画面対応の恩恵も大きく、タブレット向けに最適化されたアプリが違和感なく動作します。ChromeのタブレットUIは、Bluetoothマウスやキーボードと組み合わせることで、デスクトップに近い使用感を実現しています。
まとめ:次世代MRの新たな地平線
Project Moohanは、単なるVision Proの対抗製品ではありません。Googleの長年の技術開発とGeminiによるAI統合が、新たなMR体験の可能性を切り拓いています。特にGeminiとの自然な対話型インターフェースは、従来のMRデバイスにない革新的な特徴と言えるでしょう。
2025年の製品版リリースに向けて、さらなる進化が期待されるProject Moohan。MR市場に新たな選択肢をもたらすだけでなく、AIとの共生という未来の computing体験を示唆する興味深い製品となりそうです。