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中国GPUメーカーがDeepSeek AIモデルのローカル実行をサポート、AIハードウェア競争が加速

中国発のGPU技術がAI産業を変える? DeepSeekモデル対応で広がる可能性と課題

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AI技術の進化は「クラウド依存」から「ローカル処理」への転換期を迎えています。特に注目されているのが、高性能GPU(グラフィックス処理装置)を活用したAIモデルのローカル実行です。この分野で新たな動きを見せているのが、中国のGPUメーカー「Moore Threads(ムーアスレッズ)」と「Baidu(百度)」です。両社は2025年2月、自社製GPUで中国発の大規模言語モデル「DeepSeek R1」のローカル実行を可能にするサポートを開始しました。これにより、中国の技術力が世界のAIハードウェア競争に本格参入する可能性が高まっています。

中国AI産業の「二刀流」戦略:ソフトとハードの両面で存在感

中国のAI産業は、ソフトウェアとハードウェアの両面で急成長を続けています。OpenAIの「GPT-4」に対抗する「DeepSeek R1」の開発に加え、Huawei(華為)がNVIDIAの「H100」に対抗する「Ascend 910C」AIチップを準備中だと報じられたばかりです。

Huawei Ascend-910C

今回のMoore ThreadsとBaiduの動きは、こうした「中国製AIエコシステム」構想の一部と言えます。

特に注目されるのは、「ローカル環境でのAI処理」への対応です。従来のAIモデル実行はクラウドサーバーが主流でしたが、データプライバシーや通信遅延の課題から、ローカルGPUでの処理需要が増加。NVIDIAの「RTX 4090」やAMDの「Radeon RX 7900 XTX」はこの分野で先行していましたが、中国メーカーが自国市場向けに代替ソリューションを提供し始めた形です。

Moore Threadsの挑戦:ゲーミングGPUからAIワークロードまで対応

まず注目されるのは、Moore Threadsが展開する「MTT S80」と「MTT S4000」です。

Moore Threads MTT S4000
Moore Threads MTT S4000

MTT S80は2023年発売のコンシューマー向けGPUで、Black Myth: Wukong(黒神話:悟空)のような高負荷ゲームで最大3倍の性能向上を実現したと報告されています。今回、同社はDeepSeekの軽量化版AIモデルをMTT S80/S4000で動作可能にするデプロイメントサービスを提供開始。特にMTT S4000は、48GBの大容量メモリと200 TOPS(1秒あたり200兆回の演算)のAI演算性能を備え、ワークステーション向けとして設計されています。

さらに同社は、「KUAEクラスター」と呼ばれる自社開発のAI専用システムを公開。MTT S4000を並列接続し、大規模なAI演算タスクを効率化する仕組みです。ただし、現時点でのDeepSeekモデルの実行性能は未公表。NVIDIAの「RTX 4090」やAMDの「Radeon Instinct MI300」と比較してどの程度の差があるかは、今後の検証が待たれます。

BaiduのKunlun Core P800:コスト効率に特化したAIチップ

もう一つの主役が、Baiduの「Kunlun Core P800」です。このAIチップは、同社が開発した30,000基規模のAIクラスターで採用されています。特徴は以下の3点です。

  1. 8ビット推論対応:従来の16ビット処理に比べ、メモリ使用量と電力消費を削減。
  2. コスト効率:同クラスの他社GPU比で導入コスト20-50%低減(MyDrivers調べ)。
  3. DeepSeek V3/R1モデル完全対応:複雑なAI推論タスクを容易にデプロイ可能。

Baiduは検索エンジンや自動運転技術で知られますが、ハードウェア分野でも自給自足を推進。米中対立の影響で海外製チップの調達が不安定化する中、国内生産体制を強化する戦略が見て取れます。

中国GPUの課題と世界市場への影響

現状、中国製GPUの最大の課題は「ソフトウェアエコシステムの未成熟」です。NVIDIAの「CUDA」のような開発者向けプラットフォームが整備途上で、汎用性の面で劣るとの指摘があります。また、米国の輸出規制により、TSMC(台湾積体電路製造)の先端製造技術を利用できず、製造プロセスの遅れが懸念材料です。

一方、中国市場の巨大さは無視できません。調査会社TrendForceによると、2025年の中国AIチップ市場規模は$15億(約2,250億円)に達する見込み。自国需要を基盤に技術を磨き、東南アジアや中東市場へ展開する「農村包囲都市」戦略が想定されます。

まとめ:多極化するAIハードウェア競争の行方

Moore ThreadsとBaiduの動きは、AIハードウェア市場が「NVIDIA一強」から「多極化」へ向かう兆候と言えます。中国メーカーの強みは以下の点です。

  • 国内需要を活用した技術改善:14億人市場で実践的なフィードバックを収集可能。
  • 政府の強力な支援:「中国製造2025」計画に基づく補助金や規制緩和。
  • コスト競争力:人件費や生産コストの安さを活かした価格設定。

ただし、日本企業にとっては慎重な分析が必要です。中国製GPUの採用にはセキュリティリスクやサポート体制の不安も伴います。一方、NVIDIA依存脱却の「第三の選択肢」として、今後の技術進化に注目すべきでしょう。AI時代のハードウェア競争は、まさに新たな局面を迎えています。

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