情報筋によると、AMDが2025年第4四半期に次世代APU(Accelerated Processing Unit)シリーズを発表する計画を進めていることが明らかになりました。この新シリーズは、現行のRyzen 8000GからアップグレードされたRyzen 9000Gになると見られています。
最有力候補となるのは「Strix Point」アーキテクチャで、これによりデスクトップAPU(Ryzen G-Series)は現行のZen 4コアとRDNA 3グラフィックスから、より高性能なZen 5コアとRDNA 3.5グラフィックスへと進化することになります。
Strix Pointアーキテクチャを採用した場合、これらのAPUはAM5ソケットをサポートするため、現行のAM5マザーボードでも利用可能になる見込みです。また、AMDはグラフィックス機能を省いた低価格モデル「Ryzen 9000F」シリーズも同時に発表する可能性があります。このタイプのCPUは、予算重視のゲーミングPC市場で人気を集めています。
AMDデスクトップAPUの進化の歴史
AMDのデスクトップ向けAPUは長い進化の歴史を持っています。これまでの主要なリリースを振り返ってみましょう:
- 2018年:Ryzen 2000G — Raven Ridge(Zen、Vega)
- 2019年:Ryzen 3000G — Picasso(Zen+、Vega)
- 2020年:Ryzen 4000G — Renoir(Zen2、Vega)
- 2021年:Ryzen 5000G — Cezanne(Zen3、Vega)
- 2024年:Ryzen 8000G — Phoenix(Zen4、RDNA3)
- 2025年:Ryzen 9000G — Strix Point?(Zen5、RDNA3.5)← 次期モデル
特筆すべきは、AMDが最近「Strix Point」の更新版となる「Gorgon Point」の存在を確認したことです。このマイナーアップデートはモバイルAPU向けとして発表されていますが、デスクトップシリーズにも採用される可能性があります。ただし、現時点ではデスクトップ向けの採用に関する具体的な情報はなく、あくまで推測の域を出ません。
新型マザーボードの登場も予定
情報筋によれば、MSIも新しい「Unify-X」マザーボードをAM5ソケット向けに導入する予定とのことです。これはおそらく800シリーズのマザーボードになると見られています。現時点でこのシリーズのマザーボードは発表されていないからです。
Unify-XはMSIの最上位モデルで、エンスージアストやオーバークロッカーを対象としたハイエンドマザーボードです。ASUS ROG Crosshair ApexやGigabyte AORUS Tachyonシリーズと同様のポジショニングになります。
「Strix Halo」の可能性も?
現時点では、AMDが「Strix Halo」APUをデスクトップAM5ソケットに導入する計画についての明確な情報はありません。しかし、もしこれが実現すれば、多くのエンスージアストから歓迎されるでしょう。
Strix Haloは16個のZen 5コアと強力なグラフィックス機能を組み合わせた高性能APUデザインです。このチップがmini-ITXマザーボードに搭載されれば、ホームサーバーや低消費電力ワークステーションにとって非常に魅力的なアップグレードパスとなるでしょう。
次世代APUの性能予想
Zen 5アーキテクチャは、Zen 4と比較して10〜15%のIPC(命令あたりのサイクル数)向上が見込まれています。また、RDNA 3.5グラフィックスは現行のRDNA 3と比較して最大20%のパフォーマンス向上が期待されています。
これらの改良により、Ryzen 9000G APUシリーズは、軽量から中程度のゲームプレイにおいて、専用グラフィックカードなしでも十分な性能を発揮できるようになるでしょう。また、AIワークロードやコンテンツ制作においても、より効率的な処理が可能になると予想されます。
市場への影響と競合状況
Intelも「Lunar Lake」アーキテクチャを採用した次世代のCPUを開発中であり、統合グラフィックスの性能向上に注力しているとされています。AMDの新型APUは、こうしたIntelの動きに対抗する形となります。
特に、エネルギー効率とコンパクトなフォームファクタを重視するユーザーにとって、高性能な統合グラフィックスを持つAPUは魅力的な選択肢となるでしょう。ゲーミングPC市場においても、エントリーからミドルレンジのセグメントで影響力を持つ可能性があります。
日本市場での展望
日本国内では、限られたスペースでの使用に適したコンパクトPCの需要が高いことから、統合グラフィックス性能が向上した次世代APUは特に注目されるでしょう。また、電力効率の向上は、日本の高い電気料金環境においても魅力的な要素となります。
予想される価格帯としては、現行のRyzen 8000G APUシリーズが約3万円〜5万円(約200〜333ドル)であることから、Ryzen 9000Gシリーズも同様の価格帯になると予想されます。ただし、新アーキテクチャ採用による若干の価格上昇の可能性もあります。
まとめ:次世代APUがもたらす新たな可能性
AMD Ryzen 9000G APUシリーズは、2025年第4四半期という比較的遠い将来の製品ではありますが、デスクトップPC市場に新たな選択肢をもたらす可能性を秘めています。Zen 5コアとRDNA 3.5グラフィックスの組み合わせは、コンパクトながらも高性能なPCシステムの構築を可能にするでしょう。
特に注目すべきは、統合グラフィックスの性能向上です。近年のAPUは、一部のゲームや創作活動において、エントリーレベルの専用グラフィックカードに匹敵する性能を発揮するようになってきています。Ryzen 9000Gシリーズではこの傾向がさらに進み、より多くのユーザーが専用グラフィックカードなしでも満足できるパフォーマンスを得られるようになるかもしれません。
もちろん、現時点での情報は限られており、実際の製品仕様や発売時期は変更される可能性があります。しかし、AMDのAPU開発の方向性は明確であり、統合グラフィックス性能の向上と電力効率の改善に焦点を当てた製品開発が続けられることは間違いないでしょう。
今後も新たな情報が入り次第、続報をお伝えしていきます。AMD Ryzen 9000G APUシリーズの詳細については、AMDからの公式発表を待ちたいと思います。