Qualcommの次世代フラッグシップSoC「Snapdragon 8 Elite Gen 2」の初となるAnTuTuベンチマークスコアが明らかになりました。情報筋によれば、この次世代チップは現在Android端末の最高スコアを持つモデルより40.7%高いスコアを記録したとのことです。これはスマートフォン市場に大きな影響を与える可能性がある注目すべき進化といえるでしょう。
3.8百万点という驚異的なスコア
中国のリーカーDigital Chat Stationが中国のSNS「Weibo」で公開した情報によると、Snapdragon 8 Elite Gen 2は驚異的な3.8百万点(380万点)をAnTuTuベンチマークで記録したとされています。これは現在AnTuTuのリーダーボードでトップに位置するiQOO 13のスコア(約2.7百万点/270万点)と比較して40.7%も高い数値です。

iQOO 13はSnapdragon 8 Elite(第一世代)を搭載しており、現時点でのAndroidスマートフォンの性能指標となっています。そのデバイスをさらに40%以上上回るパフォーマンスは、次世代のスマートフォンがいかに強力になるかを示唆しています。
AnTuTuは総合的なベンチマークテストで、CPU性能とGPU性能の両方を測定するため、この大幅なスコア向上はCPUクラスターとAdreno 840 GPUの両方で広範な改良が行われていることを示唆しています。
最新の製造プロセスと技術改良
Snapdragon 8 Elite Gen 2の大幅な性能向上にはいくつかの要因があると考えられています。まず注目すべきは製造プロセスの進化です。
この次世代チップはTSMCの第3世代3nmプロセス「N3P」で製造される予定です。これは現行のSnapdragon 8 Eliteよりも進化したプロセスで、同じ電力消費でもより高いパフォーマンスを実現することが可能になります。
また、CPUコアについては、Qualcommは「Pegasus」と呼ばれる改良されたOryon CPUコアを採用する見込みです。以前のリークによれば、これらのパフォーマンスコアは5.0GHzという高いクロック周波数でテストされているとのことです。現行モデルからの周波数の引き上げにより、シングルコアパフォーマンスが大きく向上すると予想されます。
さらに、Snapdragon 8 Elite Gen 2はARMの「Scalable Matrix Extension(SME)」をサポートする可能性があります。SMEは行列演算を高速化する拡張機能で、AI処理や機械学習のワークロードで大きなパフォーマンス向上をもたらすことが期待されています。
CPUクラスター構成は維持か
興味深いことに、Qualcommは新しいSnapdragon 8 Elite Gen 2でも、現行のSnapdragon 8 Eliteと同様のCPUクラスター構成を維持する可能性が高いとされています。つまり、1+3+4の構成(1つのプライムコア、3つのパフォーマンスコア、4つの効率コア)が継続されると予想されます。
ただし、同じクラスター構成を維持するとしても、前述のように各コアは改良され、より高速なOryon CPUコアが採用されることで、全体的なパフォーマンスが大幅に向上するとみられています。現行モデルでもSnapdragon 8 Gen 3からOryon CPUコアへの移行により大きな性能向上がありましたが、Gen 2ではさらなる進化が期待できます。
GPUの進化も見逃せない
AnTuTuスコアの大幅な向上はCPU性能だけでなく、GPU性能の向上も大きく寄与していると考えられます。Snapdragon 8 Elite Gen 2はAdreno 840 GPUを搭載するとされており、現行モデルのAdreno 830からさらなる改良が施されている可能性が高いです。
モバイルゲームの高度化やAR/VRアプリケーションの普及に伴い、GPUの性能はますます重要になっています。Adreno 840は、より複雑なグラフィックスをスムーズに処理し、高リフレッシュレートディスプレイでも安定したフレームレートを維持できるよう設計されていると予想されます。
市場投入時期と搭載機種の予想
Snapdragon 8 Elite Gen 2の正式発表は数ヶ月先になると予想されています。Qualcommは通常、年末頃に次世代フラッグシップチップを発表し、その後翌年初頭から搭載デバイスが市場に登場します。
搭載機種としては、Xiaomi、vivo、OPPO、Samsungなどの主要メーカーのフラッグシップモデルが候補として挙げられます。特にiQOOシリーズは現行モデルでもトップスコアを記録していることから、iQOO 15シリーズも早期に採用する可能性があります。
日本市場では、Xperia、AQUOSなどのハイエンドモデルへの搭載も期待されますが、具体的な発売時期や搭載モデルについては今後の発表を待つ必要があります。
競合との比較
現在のモバイルSoC市場では、QualcommのSnapdragonシリーズの他に、MediaTekのDimensityシリーズ、Appleの独自設計チップ、GoogleのTensorシリーズなどが競合しています。
特にAppleは自社設計のA18チップを今秋発表予定のiPhone 16シリーズに搭載すると見られており、こちらも性能向上が期待されています。Snapdragon 8 Elite Gen 2の登場により、AppleとQualcommのチップ性能競争はさらに激化すると予想されます。
MediaTekも次世代のDimensity 9400を開発中とされており、TSMCの最新プロセス技術を採用するとの噂があります。Android市場におけるハイエンドSoCの競争も一層激しくなりそうです。
まとめ:次世代スマートフォンの性能は新次元へ
Snapdragon 8 Elite Gen 2の初期ベンチマーク結果は、モバイルデバイスの性能が再び大きく向上することを示唆しています。現行モデルから40.7%という大幅な性能向上は、単なる定期的なアップデートを超えた飛躍的な進化といえるでしょう。
TSMCの最新3nmプロセス技術、改良されたOryon CPUコア、アップグレードされたAdreno GPU、そしてAIアクセラレーションの強化により、次世代のスマートフォンではよりスムーズなユーザー体験、高度なAI機能、より美しいグラフィックスが実現すると期待できます。
ただし、これらのリーク情報はあくまで非公式なものであり、正式な発表までは慎重に受け止める必要があります。性能向上が実際のデバイスでどのように体感できるか、バッテリー効率はどうなるのか、熱問題はどう対処されるのかなど、実際のデバイスで確認すべき点は多くあります。
次世代SoCの進化は、スマートフォンの可能性をさらに広げるものとなるでしょう。今後のQualcommの公式発表や、実機テストの結果に引き続き注目していきます。