2025年のグラフィックカード市場に新たな展開が訪れようとしています。中国のテックフォーラムChiphellからの情報によると、AMDの次世代ミドルレンジグラフィックスカード「Radeon RX 9060 XT」が2025年5月頃、台湾で開催される世界最大級のコンピューター展示会「Computex」の時期に合わせて発売される見込みです。
このタイミングは、NVIDIAが先日発表したGeForce RTX 5060 Tiの発売直後となり、ミドルレンジGPU市場での競争が一層激化することを示しています。AMDはまだ公式に次期GPUの発表計画を明らかにしていませんが、Computexという大型イベントに合わせて新製品を投入する戦略は同社の過去のパターンからも十分に考えられます。
RTX 5060 Tiの課題を克服できるか
NVIDIAのGeForce RTX 5060 Tiは8GBと16GBのバリアントが発表され、比較的魅力的なMSRP(メーカー希望小売価格)を提示しましたが、実際の市場では定価を上回る価格設定で販売されているケースが多く、消費者からの評価は芳しくありません。さらに、在庫レベルの問題も指摘されており、需要に対して十分な供給ができていない状況です。
この状況を受け、AMDのRadeon RX 9060 XTには大きな期待が集まっています。競争力のある価格設定だけでなく、十分な供給量を確保することで、市場シェアを獲得できる可能性があります。AMDがこれらの要素にどれだけ注力するかが、製品成功の鍵を握るでしょう。
Radeon RX 9060 XTの仕様と性能
現在判明している情報によると、Radeon RX 9060 XTはNavi 44ダイを採用し、128ビットのメモリバスインターフェイスを搭載する予定です。メモリ構成はNVIDIAの競合製品と同様に8GBと16GBの2バージョンが用意される見込みです。
性能面では、2,048 SP(ストリームプロセッサ)を搭載し、これはRadeon RX 9070 XTの半分の規模となります。さらに、ゲームクロックは2620 MHz、ブーストクロックは3230 MHzと設定される見込みで、前世代のRadeon RX 7600 XTと比較して大幅な性能向上が期待されています。
【Radeon RX 9060 XT予想仕様】
- GPUアーキテクチャ: RDNA 4
- GPU: Navi 44
- ストリームプロセッサ: 2,048基
- メモリバス: 128-bit
- メモリ容量: 8GB/16GB
- ゲームクロック: 2620 MHz
- ブーストクロック: 3230 MHz
これらの仕様から、フルHD(1080p)解像度でのゲームプレイでは非常に高いパフォーマンスを発揮し、QHD(1440p)解像度でも十分に実用的な性能を提供できる可能性があります。
価格競争力と市場戦略
NVIDIAのGeForce RTX 5060 Tiが379ドル(約56,850円)〜429ドル(約64,350円)の価格帯で発売されたことを考慮すると、AMDはこれを下回る価格設定でRadeon RX 9060 XTをリリースする可能性が高いと予想されています。AMDは過去にも価格競争力を強みとして市場シェアを獲得してきた実績があります。
最近のドイツの大手PCパーツ販売店MindFactoryの販売データによると、AMDのRadeon RX 9070 XTはNVIDIAのRTX 5080の10倍以上の売上を記録したとされており、この傾向がRX 9060 XTにも波及すれば、ミドルレンジGPU市場でAMDが優位に立つ可能性は十分にあります。
また、現代のゲーマーにとって重要な要素であるレイトレーシングや機械学習を用いたFSR(FidelityFX Super Resolution)などの機能がどの程度強化されるかも、製品の競争力を左右する重要なポイントとなるでしょう。
RDNA 4アーキテクチャの展望
興味深いのは、RDNA 4世代のGPUラインナップについては、ハイエンドモデルが含まれない可能性が高いという噂です。AMDは「Navi 4X」シリーズでミドルレンジからエントリークラスに注力し、ハイエンド市場ではRDNA 3世代の上位モデルを継続して販売する戦略を採用する可能性があります。
この戦略は、多くのゲーマーが実際に購入するミドルレンジ市場での競争力を高める一方で、開発リソースを効率的に配分する意図があると考えられます。昨今のゲーミングPCやポータブルゲーミングPC市場では、極端な高性能よりもコストパフォーマンスが重視される傾向にあり、この市場動向に合わせた戦略と言えるでしょう。
日本市場での影響と期待
日本市場においては、円安の影響もあり輸入製品の価格高騰が続いています。そのため、コストパフォーマンスの高いミドルレンジGPUへの需要は特に高まっている状況です。
Radeon RX 9060 XTが競争力のある価格で日本に投入された場合、多くのゲーマーやクリエイターにとって魅力的な選択肢となる可能性があります。特に、ポータブルゲーミングPCやコンパクトなゲーミングPCビルドを検討しているユーザーにとって、消費電力と性能のバランスが優れたGPUの登場は朗報となるでしょう。
また、仮想通貨マイニングブームが一段落している現在、ゲーマーが適正価格でGPUを入手できる環境が整いつつあります。AMDが十分な供給量を確保できれば、長らく続いた「買いたくても買えない」状況からの脱却を促進する一因となることも期待されます。
まとめ:ミドルレンジGPU市場の行方
2025年5月に予定されているRadeon RX 9060 XTの登場は、ミドルレンジGPU市場における重要なターニングポイントとなる可能性があります。NVIDIAのRTX 5060シリーズとの直接対決は、価格、性能、機能面での競争を活発化させ、最終的にはユーザーにとってより良い選択肢が増えることにつながるでしょう。
AMDが価格競争力と供給量の両面で優位に立つことができれば、市場シェアを大きく拡大する機会となります。一方で、NVIDIAもRTX 5060シリーズの供給問題を解決し、AIやレイトレーシング性能といった独自の強みを前面に押し出してくることが予想されます。
現時点では、AMDの公式発表を待つ必要がありますが、Computex 2025に向けて両社の動向から目が離せない状況です。今後も最新情報が入り次第、詳細をお伝えしていきます。
グラフィックカードの新たな世代交代期を迎え、ゲーマーやクリエイターにとって選択肢が広がることは間違いありません。価格と性能のバランスを重視するミドルレンジユーザーにとって、2025年は特に注目すべき年になりそうです。
